警告・これはあくまでジョークです。原作のタカマガハラとは設定などが異なる場合があります。違いすぎですか。気にするな(命令形)
Attention・今までに公開していた分も、事情により大幅に直しが入っています。今後、どうなるか分かりません。

夢幻戦隊
レンジャー


主な登場人物

結姫:タカマレッド。
隆臣:タカマブラック。月読獣バスターとして世界を旅していた。
颯太:タカマイエロー。シーヤー=通信技師。衛星などから情報を受信する技術者。
鳴女:思兼神=スペースステーション『TEN-十九』の司令官。Ama-NO-Iwatoプロジェクトリーダー。
改良ビンガー:元月読獣。月読による遠隔操作を逃れ、他の月読獣開放のために結姫を支援する。
月読:コングロマリットSyn-OQの実質的な経営者。独裁政権を狙っているようである。

 スペースステーション『TEN-十九(てん・じゅうきゅう)』。
 その一室でコンソールを前に複雑な表情を浮かべる女性士官。
「いけないわ、このままでは。仕方ない、あのプロジェクトを発動するしかないようね……」
コントロールパネルのキーを忙しなく叩き続ける女性士官。コンソールには、『Project Ama-NO-Iwato STAND BY』の表示。そして、その下には音声によるロック解除パスワードの入力プロンプトが表示される。
「勾玉よ、天降りて中ツ国を目指せ。なんじを呼ぶもの汝を持つべき者を探し出せ」
 声紋照合、パスワード確認の文字。
 そして、コンソールパネルに3重ロックのボックスが現れ、中からレバーが現れた。そのレバーに手をかける女性士官。
「宝珠降臨!」
 その声とともに引かれるレバー。スペースステーションTEN-十九より放たれる、赤・緑・青・黄色・ピンクの『5本(重要)』の光。
 ここに、新たなる伝説が幕をあけるのであった。



第1話 宝珠降臨!タカマガレッドの使命!

 長らく晴れたことのない分厚い雲。その雲を突き抜け、地表を目指す光。
 その、赤い光に包まれた赤の勾玉は、若狭結姫のもとに舞い降りた。
「なに、これ。どうして空から……?」
 結姫は手の中に舞い降りた不思議な石をじっと見つめた。
「結姫、おはよ。なにしてるの?遅れちゃうよ」
 不意に語りかけて来たのは愛しのクラスメートの甲斐隆臣だった。
 隆臣と肩を並べて歩く至福の一時。それも、学校につくまでである。

 学校で、女子トイレの鏡をのぞき込む結姫。その時、ポケットの中に広がる熱。慌ててポケットの中に手を入れると、熱を放っていたのはあの石である。
 異変を友達に知らせようとした瞬間、目の前の鏡に、あらぬ物が写し出された。軍服姿の若い女性。
「いやあああ!」
 まさか、戦死した女性兵士の亡霊!?そんな怖いイメージが結姫の中に沸き起こる。
 教室に逃げ帰っても、恐怖に震え続ける結姫に、優しい声をかけてくれたのは、愛しの隆臣であった。
 放課後になり帰宅した結姫がうがい手洗いのために洗面所に立つ。不意に熱を発し始める石、目の前に再び現れた女性の姿。
 この石だ。この石のせいだ!
 結姫は自室に駆け戻ると、石を机の上に置き、毛布を頭から被った。

「困ったわね、怖がって私の話を聞いてくれないわ」
 言葉どおり、悩みはてた顔をしている女性士官。
「アプローチの方法を考えてみなくてはいけないわね。そう、この軍服姿が怖すぎるんだわ」
 女性士官は、しばらく考えた後、小さく頷くと立ち上がった。

 その頃、結姫は思い直し、勇気を振り絞り、鏡の前に立とうとしていた。
 あの女の人、なにか言いたそうにしていた。私に、言いたいことがあるんじゃ……。
 鏡の前に立つ結姫。石は再び光と熱を発し始めた。そして、鏡に写った自分の姿が揺らいでいく。
 や、やっぱりでてきた……。でも、でも、何であんな格好をしているの!?
 鏡の中の女性は、なぜか今人気の女の子むけアニメのコスプレをしているのであった。
 一方、TEN-十九の司令室のモニターには、真剣なまなざしでこちらに目を向けている結姫の姿が写し出されていた。
 それを見た女性士官は、自分の心配が無用だったことと、はずしたことを悟ったのだった。
 結姫は鏡の中の女性をじっと見つめていた。女性は、そっと手を差し延べてくる。その手に握られた円形の、鏡のような物。
「えっ、もしかして……受け取れって?」
 結姫の言葉に鏡の中の女性は頷く。しかし、鏡の中の物を受け取るなんて……。
 しかし、その鏡は不意に結姫の目の前に物質化するのである。そう、転送装置によって。
 鏡を手にした結姫。そして、その鏡からわき上がるようにその姿を表した鏡の向こうにいた女性。
「やっと会えた……中ツ国の少女」
 驚く結姫。
「幽霊と話ができるなんて……」
「幽霊ではありません。ホログラムです。鏡は、あなたのいる世界と私のいる世界をつなぐ大切な道具なのです。もっとも、声も送れるのはそのホログラム投影装置『神獣鏡』だけですが」
 なぜかレトロなネーミングのホログラム投影装置の上に浮かんだ女性は結姫に向かって言った。
「聞いてください、中ツ国の少女」
「あたし結姫……。中ツ国って?ここは日本だよ」
「私たちの世界ではあなたがたの人間界のことを中ツ国と呼びます。そして、私たちの世界、あなたがたが神の領域だと思っている所はこう呼びます。『高天原』と。その勾玉を持っている者は選ばれた者。そのものだけが高天原へ来ることができます。中ツ国を救えるのです。結姫、どうか高天原に来て、天照様を助けてください」
 言われてはっとなる結姫。長い話なので眠くなりかけていたのだった。
「今、うとうとしてたでしょう。いけません。眠ってしまうとあなたは高天原にいってしまいます。眠そうなので手短に話しますね。まず、天照様はいわば太陽です。しかし、天照様の体はもうもちません。それを救えるのはあなただけなのです。あなたは、高天原ではタカマガレンジャータカマガレッドとして戦うことになります。そして、その勾玉にはタカマガレンジャーとしての力を開放するための特殊なパワーがあります。いいですか、その呪文は……あ」
 結姫はすでに眠っていた。

 結姫が目を覚ますと、見覚えのない砂漠のど真ん中に倒れていた。
 なに、これ。夢?
 辺りを見渡す結姫。その背後に忍び寄る謎の影。それに気付き振り返る結姫の目の前には、ガラの悪い男の集団が。
「見ろ、女の子だぜ。こんな所で、珍しいな。お頭にさし出すぞ、お頭を呼べ」
 恐怖に打ち震える結姫。
「隆臣さん、こちらですぜ」
 その時聞こえて来たのは愛しの(くどい)あの人の名前だった。
 しかし、期待とは裏腹に現れたのは別人だった。
 失望する結姫。それでも、勇気を振り絞って話しかけようとする結姫の言葉には耳を傾けようとせず、隆臣と呼ばれた少年はその唇を結姫の唇へ……。


いいところですが、第1話終了です。

次回予告

「いやっ、やめて!助けて、隆臣君!ファーストキスが奪われちゃうよぉっ」
「チッ、いいところで……何事だ!?」
「お頭、た、大変です!伝説の、魔鳥ビンガーがああぁっ!」
「だめ、殺さないで!助けを求めている!」
次回、『強襲、謎の怪鳥!伝説魔鳥ビンガー』
来週も、高天原でぼくと握手!

第2話 強襲、謎の怪鳥!伝説魔鳥ビンガー

 結姫に迫る隆臣の唇!ああ、せめて目の前の隆臣が、あの愛しの(飾りをつけるのはやめたらしい)隆臣君だったならば……!お父さん、お母さん、助けて……。隆臣君……!
 さまざまな思いが結姫の胸の中をめぐる。いいの?こんなこと。この番組って対象年齢5才未満よね……。
 その時だった。巻き起こる激しい風!舞い上がる砂ぼこり!
「チッ、いいところで……何事だ!?」
 視聴者の心の代弁のようなことを叫び、向き直る隆臣。その視線の先には、巨大な鳥影。金色に輝く羽に全身を包んだ鳥。
「お頭!これは……伝説の魔鳥、ビンガーでは!?」
「ビンガーだとぉっ!?なぜ、伝説の中の生き物がここにいるんだ!」
 叫ぶ隆臣。その声に応えるかのようなビンガーの咆哮。
「ふっ、まあいい。ちょうど腹も減っていたところだ。いくぜ、野郎共!」
 隆臣の言葉にショックを受ける結姫。まさか、食べる気なの!?あれを!?
 隆臣が魔鳥ビンガーに向かって駆け出したその時。
     助けて……
「えっ!?」
     助けて……!
「や……やめて!」
 結姫の言葉に足を止める隆臣。そして振り返る。気がつくと、手下は誰一人ついて来ていなかった
「てめーら、びびってんじゃねー!」
 叫ぶ隆臣。その隆臣の裾を掴む結姫。
「なにすんだ!放せ!」
「やめて!助けてっていってるでしょ?」
「鳥が喋るわけねーだろ!」
 もしかして、あの鳥の言うことって、あたしにしか聞こえないの?
「とにかくやめて!」
 隆臣が剣を収めたのを見て、魔鳥ビンガーの方に向き直る結姫。
「どうしたの?なぜ、助けを求めているの?」
「あなた、あたしの言葉が分かるのね?あたしは月読獣『改良ビンガー』。お願い、あたしを元の体に戻して!」
「えっ、それってどういうこと!?」
「あたしたち月読獣は、世界征服を企むコングロマリット『Syn-OQ(シン・オーキュー)』の社長、月読の命令で生物兵器として改造されているの」
「ひどい……!どうすれば元に戻せるの?」
「分からないわ……。でも、あなたはあたしの言葉が分かるんでしょう?それならば、勾玉を持っているのね?」
 結姫は頷くと、ビンガーに勾玉を見せた。その瞬間、勾玉は激しい光を放ち、その光に照らされた魔鳥ビンガーは、光の中に溶け込むようにして消えていった。そして、光がおさまると、目の前には金色の小鳥が一羽、羽ばたいているのだった。
「その勾玉……!あなた、ホル・アクティね!?伝説の少女なのね!」
「えっ、ホル・アクティって……なに?あなた、ビンガーなの?」
「そうよ。これがあたしの元の姿なの。ホル・アクティっていうのはね、タカマレッドの別の呼び名よ」
 そういえば、眠る前に会ったあの女の人がタカマレッドとか言っていた。話をよく憶えていないのは眠ってしまったからだろう。
「これは、どういうことなの?ホル・アクティって、タカマレッドって何なの!?」
 叫ぶようにビンガーに問う結姫。
「いいわ、教えてあげる。あんたは伝説の戦隊タカマガレンジャーの一員で、リーダーにあたるのがタカマレッド。あんたの使命はあたしたちみたいな月読獣を月読から開放し、月読を倒すことよ!」
「ビンガーはずいぶん詳しいのね」
「あたしたち月読獣達はね、こうして元の体に戻れる時をずっと待っているの。月読獣ならみんな知ってるわ」
「でも。どうすればそんな事できるの?今のだって、どうやったのかよくわからないし……」
「それはあたしにも分からないわ。そのために、他の4人の仲間が必要になるのよ」
「他にも仲間がいるのね?」
「そうよ。……月読獣はそれぞれ、違う改造を受けているの。どうすれば元に戻せるのかは自分達で見つけていくしかないわね」
 そして、少し離れた場所に、そんなやり取りを厳しい表情でじっと見守っている隆臣の姿があった。

 スペースステーション『TEN-十九』。その一室で、女性士官はコンソールを見ながら溜め息をついた。
「だめだわ、神獣鏡が応答しないわ。音声だけでも送れればいいのに……。ダメねぇ、最新の機器は故障しやすくて。勾玉捕捉衛星も動作不審だし……。技術部に文句言ってやらなくちゃ」

 結姫は、頼るあてもないこの世界を旅するために、隆臣の一味と共にすることになった。
 砂漠を延々と歩く。ふと、隆臣の一行の歩みが止まった。
「おかしいな。この辺にも泉があったはず……」
 見渡す隆臣。辺りには泉など見当たらない。その隆臣が、はっとなった。
「吸われたな。いるぞ……!みんな、走るんだ!」
 その言葉が終わるか終わらないかと言ったタイミングで砂の中から突然飛び出す触手!結姫はその触手に搦め取られ、天高く掲げあげられた。見下ろすと、下には巨大な花。
月読獣、ディザリア!離れろ、食われるぞっ!」
 鬼気迫る隆臣の怒号。隆臣は、剣を抜き放ち大きく跳躍する。
「真ん中からまっぷたつにしてやる!」
「だ、だめ……殺しちゃダメええぇぇっ!」
 悲痛な結姫の叫び。それと同時に巻き起こる激しい光。勾玉が光を放っていた。そして、その光を浴びてビンガーが、巨大な伝説魔鳥ビンガーへと変身を遂げた。
 伝説魔鳥ビンガーの口より放たれるショックウェーブキャノン!砂漠花はその衝撃を受け、動きを止める。
「今よ、結姫!あたしの後に続いて唱えて!」
 ビンガーの言葉どおり、ビンガーに続いて詠唱を始める結姫。
高天の原に光あり。昼と夜とを分け、葦原のため水穂のため、地を照らす光となれ。宝珠開放!
 詠唱が続く間にも、砂漠花の花弁は閉じていく。そして、その閉じきった花弁から柔らかな光が漏れ出た。突如、花弁は押し広げられたかのように開き、辺りに光が広がった。
「だいじょうぶ、もう、この花は人を食べたりしないわ!」
 花びらの間から姿を表わした結姫は、真っ赤なコスチュームに変身していた。
「ど、どういうことだ!?」
「あの少女……。ホル・アクティだ」
「えっ!?」
 驚く子分をよそに隆臣は独りごちた。
「遂に見つけた……、勾玉を持つ者、俺の仲間を……!」

次回予告

「月読獣、シトロン・へロス!くそっ、このままじゃ、勝てない……!」
「あなたは誰……?どうしてあたしを助けてくれるの!?」
「正体を明かすわけにはいかない。しかし、タカマレッド。俺はお前の味方だ」
次回、『新しい仲間あらわる!?月読獣シトロン・へロスとの戦い!』
来週のこの時間は『激突in東京Doom(ぉぃ)!巨人×阪神!〜奪われた首位!ゴジラ松井逆襲のアーチ〜』をお送りします。

第3話 道しるべ?もう一つのタカマガレンジャー!

鮑(おわび):タイトルおよび内容が予告と違うことをスタッフ一同心より心をこめておわびいたします。

「『高天の原に神々の黄昏のおとずれし時、タカマガレンジャー五つの宝珠とともに昼と夜の間におり立つなり』……。神々の黄昏、何千年かに一度やってくる危機……終末のことよ。天照様に何かが起こって太陽がなくなってしまうの。でも、その時にホル・アクティが現れて太陽を取り戻してくれる……っていうのが高天原に古くからある伝説なのよ」
「やだー。そ、そんなものすごい人があたしであるわけないじゃないっ」
「そんなこといってる場合じゃないのよ、結姫!太陽がなくなってしまったら中ツ国だって消滅しちゃう。結姫の大好きな人だって生きてはいられないのよ!……太陽の力が弱まると時空間に異常が生じて高天原のいろいろな所にほころびができてゆくの。それは中つ国にも影響してこちらの生き物が中ツ国に入りこんでしまったりするの。中ツ国でまれにいるはずのない生き物が目撃されることがあるでしょう?あれはみんなこちらから入り込んだ生きものたちなのよ」
「どこから入ってくるの?」
「主に神社とか鏡のある場所……とかね。高天原と中ツ国が一番近くなってる場所だからワームホールができてしまうのよ」
「わかんない……その理屈もなんだかよくわかんないけど、私にはどうしたらいいかわかんないもん!」

星空の下のキャンプ。隆臣とその子分達とのキャンプである。結姫がいくら11才でも、相手は青春まっしぐらな年ごろのオトコノコ。一緒に寝るなんて危険きわまりない。
盛大にたかれている焚き火。燃え盛る炎を見ていると、身も心も火照って開放的に……
なんて展開を期待している人はあしからず。この番組はあくまでもお子様むけです。
隆臣は炎に見入っている。ああ、その翳のあるシリアスな横顔も素敵などと結姫が思ったかどうかは本人に聞いてみないと分からないが。
よく見ると、額に巻かれていた包帯が取られている。その包帯のあったところには文字のような形のアザが見てとれる。
隆臣がじっと見つめている結姫に気付いた。隆臣は結姫の方に目を向ける。交わる視線。見つめあう二人。もはや二人には言葉はいらなかった。……この番組は返す返すもお子様むけです。
「なんだ」
隆臣の言葉で現実に引き戻される結姫。
「あ、あのね」
焦って言葉が見つからない。
「助けに……来てくれたでしょう?……あ、ありがとう……」
「邪魔だったらぶっ殺して通るまでだ。いつもそうしてる。お前のためだったわけじゃない。それに……結局俺の助けなんかいらなかったし。なぁ?すいませんねぇ、お役に立てなくて」
なぜか卑屈なことを言う隆臣。顔に合わない
そう、助けはいらなかった。俺の力はいらないのかもしれないし、いざという時には俺では役不足なのかもしれない。だが俺だって、あの力を使えば。
「ありがとう……」
結姫の言葉で思考を中断される隆臣。
「……だから……!」
「殺さないでくれて……」
その言葉を訊いた隆臣は、微笑むと結姫を抱き寄せた。
「どーせお礼するならさ、もっとこう、別の……」
いいながら結姫の顔に自分の顔を近づける隆臣、そして何かの覚悟をする結姫。何の覚悟なのかは分からないの。子供だから。結姫はまだ11だから♪古いですか。
その11の結姫の唇に隆臣の唇が……ちょっと、まずいよそれは。お子様むけ……あああああ。児童福祉法違反でつき出すぞ。
「やめた」
寸止めであったと言う。あなたの心境は?
 1・よかった。
 2・残念。
では、結姫ちゃんの心境は?
 1・助かった。
 2・残念。
「伝説の少女様に手ぇ出すわけいかねーもんな」
などと言い残し去っていく隆臣。
「そんなんじゃないもん!」
結姫は少し残念だったようだ。隆臣がせっかく暖かい場所を譲ってくれたにもかかわらず、悶々としてなかなか寝つけなかったという。

中ツ国。
「結姫?」
ぼーっとしていた結姫の目の前にぬっと顔を出してきたのは隆臣君である。選りにもよって、ぼーっとしていた理由というのが、高天原での隆臣の寸止めキスのことだったので、心臓が止まりそうなほど驚く結姫。
なんと、愛しの(またやる)隆臣君は席替えで隣の席になっていた。こうして二人の距離はどんどん近づき、もう誰にも止められなくなるのだ〜などと妄想をふくらましていた所に現れたのは、恋敵の和泉那智♂である。
「なーなー、隆臣ぃ。昨日の『タカマガレンジャー』見たか?」
聞き覚えのあるワードにはっとなる結姫。そう、『タカマガレンジャー』は中ツ国で小中学生を中心にブームの近未来宇宙戦隊大河ドラマなのである。
「うん。見たよ。もう少しで放送終わりらしいね」
「なぁ、最終回、おれの家に見にこいよ」
「でも夜だよ」
「と、と、泊っていいよ」
少女のように頬を赤らめながら言う那智少年
「うーん、どうしようかなぁ」
「泊りに来てくれたらさ、宿題の見せっことかしようよ。徹夜でおしゃべりしたりさ。おれ、話したいことあるんだ。お前のこと好きーなんて……きゃー何言わすんだよおぉっっ」
一人盛り上がる那智少年
「やっぱりやめとくよ……」
それが賢明であろう。
「えっ、じゃあ宿題の見せっこもやらないの?」
「やらないってば那智……」
「ふん、いいねぇ、君みたいなお気楽者は。勉強もせずにそんなものを見ているから成績が下がるんだよ。勉強もしたらどうだい?」
二人の会話に割り込んで来たのはガリ勉の因幡颯太。
「お前だってみてるくせに」
「おれは勉強してるからいいんだよ」
「おれはねー、君みたいにガリガリやんなくてもパパの後を継いで社長になれるんだもんね」
那智の家は、銘菓『いずみの踊り子』で有名なイズミ・コーポレーションである。
「ふーん。君のところのイズミ・コーポレーションも君の代で終わりか」
「ほー」
「へー」
見つめあう睨みあう二人。
「ちょっと、やめてよ二人とも……」
止めに入る結姫。しかし、もうすでにある意味二人っきりの世界に入っている。
「やめてってば」

「うるせー、ブス!」
「うるせー、ブス!」

ぴったりと声を揃えて言う二人。
「ふたりともだまってそこにすわんなさい!」
結姫はキレた。もはや二人に抗う術はなかったという。

放課後。生徒にも男性教師にも人気の女教師である長門先生の周りには、生徒が群がっていた。この生徒たちのおかげで男性教師達は長門先生にアタックできないのだ。
「長門先生、昨日のタカマガレンジャー見た?」
長門先生は生徒に話を合わせるためにタカマガレンジャーを見たが最後、毎週のように話題をもちかけられるためにこの番組の呪縛から解き放たれることはできなくなってしまったという。
「見た見たぁ。人造怪獣『スサノヲ改』が最後の敵みたいね。どうなるんだろう。来週の2時間スペシャル、楽しみだねっ」
まぁ、結構楽しんでいるようなのでよし。
「でも、いつも30分なのに2時間も放送するんじゃ撮影も大変だね」
「今まで野球が何度も入ってるからいいんだよ。でもさ、2時間もやるんじゃ、やっぱりスサノヲ改に飛ばされた月読将軍も復活するんじゃないかな」
「ふん、次元の低い話題だね」
「ビデオ撮ってるくせに何を」
そんな様子をちょっと離れた場所から見ている結姫。結姫はこの番組を見ていないので話題に入れないのだ。那智と隆臣はそのおかげで最近よく話しているのを見る。このままではタカマガレンジャーがもとで那智に隆臣を取られてしまうぅ!などと不安感に駆られる。自分もタカマレッドなのだが、そんなこといえるはずもない。
「じゃあ、月読28号マビンガーロボのバトルがあるかもね」
「でも、ベースになってるのが日本神話だし、アマテラス姫も関わってくると思うんだけど」
教師らしく、もととなった日本神話について語り出す長門先生。
「だめだよ、あの番組スポンサーの影響でテコ入れ入りまくってるもん。思兼長官ばっかり出てアマテラス姫の出番無くなっちゃったじゃない。実は、アマテラス姫役の栗下ルリとスポンサーが喧嘩して脚本が変わっちゃったらしいし」
妙に事情通の那智。一方あっちで知ったワードが続々出てくるので震えが走ってくる結姫。
「そうだっ、タカマガレンジャーの最終回予想をしようよ。それ、宿題ね」

「え〜っ」
「え〜っ」
「え〜っ」

出し抜けに授業以外でも宿題が出てしまった。
「決めたもんっ、3人だけに特別課題だもんっ。今週中に提出ねっ」
軽い足取りで職員室に入っていく長門先生。一方、込み上げる絶望感からか陰鬱たる面持ちで呆然と立ちつくす3人。
「よし、こうなったらタカマガレンジャーの放送分を見直して大胆な最終回予測を立てるんだ!」
「見直すって、どうやって?」
「もちろん、颯太のビデオを見るんだよ」
「な、なんでだよっ」
「隆臣も見るよなっ」
「うーん、見たいなぁ」
多数決、民主主義の宿命である。
「よ〜し、今夜は徹夜でタカマガレンジャーだ!」
「も、もしかして泊まり……?」
いけない、隆臣君に那智の魔の手が伸びようとしている!意を決して飛び出す結姫。
「何の話をしてるの?」
「今夜颯太のうちでタカマガレンジャーのビデオを見ることになったんだ。結姫も来る?」
いきなり誘う隆臣。
「うん、行く行く」
「来るなー!」
嫌がる那智。
「どうでもいいけど、今夜いきなりはまずいなぁ。明日にしてくれないか?」
「何でだよー。あ、そうか。結姫が来ることになったから部屋を片づけるんだな。女の子を入れられる部屋じゃないから」
「違うっ!いきなり来られて泊まりじゃ親が怒るから事前に承諾をだな……」
動転して言葉が堅くなる颯太。
「じゃ、明日だな。絶対だぞ」
「わ、分かったよっ。お前らも来るなら親の了承とっとけよな。特に結姫は女の子なんだから無断外泊なんかしたら勘当されるぞ」
事態の重大さに今さらながら気付く結姫であった。でも、きっと大丈夫。子供むけ番組だから。

「おかえり、結姫」
家に帰った結姫は、早速明日の外泊のことを相談してみた。
父曰く「うーん、まだ子供だし間違いを起こすこともないだろう」
母曰く「そうねぇ、もう子供じゃないんだし分別はつくでしょうからいいでしょう」
微妙な年ごろなのである。とりあえず許可は出たので一安心。明日は隆臣君とお泊りだー♪と浮かれる結姫の後ろでは、次回の伏線となるニュースをやっているのである。
「Y県で目撃された巨大な生き物について新しい情報が入りました……」

次回予告

「月読獣、シトロン・ヘロス!タカマブラックの名にかけて貴様の命、貰い受ける!」
「タカマブラック!?それじゃ、あの人はあたしの仲間……!?」
「今宵もつまらぬものを斬ってしまった……」
あんたキャラクタ違うぞ
次回、『(今度こそ)新しい仲間あらわる!?月読獣シトロン・へロスとの戦い!』
来週のこの時間は『横浜球場の戦い!ヤクルト×巨人〜絶望の併殺打!復讐を誓うマルティネス!〜』を時間を延長してお送りいたします。

第4話 (今度こそ)新しい仲間あらわる!?月読獣シトロン・へロスとの戦い!

大きなディスプレイ。その前のコンソールを操作する青年。
「どうですか、シーヤー様。次に雨が降るのはいつごろでしょうか」
「それより、次にシトロン・へロスが現れるのはいつごろでしょうか?」
シーヤーと呼ばれた男はコンソールを操作する。その背後では村人達が、この村は呪われた村なのだろうか、この村は長続きしないのだろうか、などとぼそぼそと漏らしている。
やがて、ディスプレイの像が切り替わった。気象衛星からの画像。
「高気圧が張り出してきている。この様子だと雨は当分見込めないでしょう」
さらにディスプレイの画面が切り替わる。周辺の地形図と、地形図上の赤い点滅するドット。さらに、そのドットからくねくねと曲がったラインが出ている。
「シトロン・へロスですが、この様子だと一両日中にはこの村に再接近します。準備を整えておいたほうがいいでしょう」
聞いた結果があまり芳しくなかったためか、愚痴をさんざんこぼしてから村人達はこの場から去っていった。
溜め息をつくシーヤー。その時。

Warning!
--Interruption--

ディスプレイの表示が切り替わり、ブザーが鳴った。
息をのむシーヤー。割り込み要求を出してきたのは『TEN-十九』。政府の特命機関所有のスペースステーションである。なぜ、政府の特命機関が一介の通信技師の端末にアクセスをかけて来るのか。
再び画面が切り替わった。恐らく、衛星から送られてきている画像であろう。見覚えのある風景。恐らく、この村の近くだ。そして、その中心に写っている旅人らしき一団。その一団に画像がスムースにズームインしていく。衛星からの通信だというのに芸が細かい。スクリーンいっぱいに写し出された少年と少女。やがて、その画像は不意にかき消え、通信切断の警告表示のみがスクリーン上に点滅し始めた。

広大な砂漠地帯。その真ん中に村を見つけた一行は、補給のために立ち寄ることになったのだった。
「オヤジ、この村は最近できたのか?」
買い物の途中、店のオヤジに訊ねる隆臣。
「ええ、まだできたばかりです。なんせ水が手に入りにくいので不便ですよ。今年は特に日照り続きで毎日シーヤー様に雨の状態を調べてもらっている状態でして」
オヤジは一息入れてからぼやく。 「おまけにこうたびたびシトロン・へロスに襲われたのでは……」
「シトロン・へロス!?」
驚いた顔でオヤジの方に向き直る隆臣。しかし、オヤジは服を探していた結姫の応対を始めている。隆臣は黙り込んだまま、難しい顔をした。

水を探しに行っていた子分達が戻ってきた。しかし、水は見つからなかったようだ。
これからどうするかを議論しながら歩き出す隆臣達。が、隆臣はすぐに足を止めた。
「……尾けられている」
隆臣がそう呟いたのと、物陰から人影が飛び出してきたのはほぼ同時だった。
「しまった!都市警備隊だ!」
叫ぶ隆臣。襲いかかってくる都市警備隊。警備隊だけあって一人ではない。あっという間に取り囲まれてしまった。
「捕まってたまるか!こいつらを皆殺しにすればすむことだ!」
「だめーっっ、そんなこと!」
隆臣に組みつく結姫。その隙に、隆臣は警備隊の一撃をくらい倒れ込んでしまった。子分達も次々と取り押さえられ……。

「これで全員か?」
「はい。センターの人間が二、三日で引き取りにくるそうです」
「二、三日ね……」
都市警備隊の二人は、留置室から聞こえてくる激しい口論の声にうんざりしながら溜め息をついた。
「てめーのせいでこのざまじゃねーかっ!」
「質問の答えになってないっ!一体どんな悪さしたのよっ!」
「てめーにかんけーねーだろっ!」
結姫は、怒りゲージがマックスに達すると、必殺暴徒鎮圧シャウトを発することができるのだ!
「全員そこにすわんなさい!」
鎮圧される隆臣達。
「チッ、分かったよ。言やぁいいんだろ、言やぁ」
そう言うと、隆臣は語り出した。
月読獣。世界中に出現する謎の怪物。隆臣は、それを相手に戦い続ける『月読獣ハンター』だった。
しかし、月読獣は月読の命令で作り出されたもの。そのため、月読の配下である都市警備隊に追われているのだ。
「よーするに、殺戮集団なわけでしょ、この人たち。一緒に行動するのってどうかと思うわ」
「でも、平和を乱す月読獣を退治してきたわけでしょ?そもそも、神獣鏡が壊れちゃったのが悪いんだし」
「そうか、神獣鏡!どうもおかしいと思ったわ!タカマレッドなら鳴女様からコンタクトがあるはずだもの」
「鳴女様って……あの軍服の?」
「そうよ。コスチュームはいろいろあるらしいけど。鳴女様は女でありながら『思兼長官』の役職についてらっしゃるえらーいかたよ。神獣鏡は天照将軍に使える思兼長官だけがもつことができるものなの。精密機器だから故障も多いって聞くわ」
「でも、それならどうして会いに来てくれないの?故障を直しに来てくれればいいのに」
「『TEN-十九』は宇宙空間に浮かんでいるわ。そして、月読の監視下に置かれているの。だから、直接来ることができないのよ」
「そっか。自由に動けないんだ。だからあたしが会いに行かなきゃならないのね。でも、どうやって〜?宇宙空間にあるのに〜」
「そ、それにはまず仲間を集めなきゃ。きっと仲間の中には宇宙船くらい使える仲間がいるはずよ。とりあえず、ひととおり必要な能力は揃うようになってるんだから。何万人もの候補の中から選ばれた仲間なんだから、その辺はバッチリ。勾玉にはいろいろな効果もあるし」
「なんか怪しい勧誘の文句みたい……。じゃ、こうしてビンガーと話せるのもそういういろいろな効果の一つなのね」
「そうよ!結姫」

「面会だ」
都市警備隊が一人の男を連れてきた。
帽子につなぎ、スクリーングラスにヘッドホンという出で立ちの筆舌に尽くしがたく胡散臭い男である。
「間違いない、この二人だ。話がしたいんだがいいか?」
「そこまではすぐには許可できない」
「私の立場を忘れたか?」
「う……。今回は特例だ。くそっ、本社の人間はわがままで困る……。派遣の分際で……」
「何か……?」
「いや……」
男を残し去っていく都市警備隊員。
「何者だ?」
「それはこっちが聞きたい。私はSyn-OQより派遣されたシーヤー、衛星通信技師だ。先ほど、『TEN-十九』からの非常通信で君達の姿が映された。君達は何者だ?『TEN-十九』の関係者か?」
その時。
「うわああああぁぁぁっ!」
「なんだ!?」
走る凄まじい振動!降りかかる瓦礫!硬化コンクリートの留置場の壁を叩き壊し現れたのは、巨大な虫であった。
「し、使徒!じゃなかったシトロン・ヘロス!こんなに早く現れるなんて……!」
「チャンスだ、逃げるぞ!」
留置場から逃げ出す隆臣たち。まるでそのあとを追うかのように飛んでくるシトロン・ヘロス。
「結姫、俺から離れるな!」
「隆臣、前っ!」
結姫たちの前にもシトロン・へロスが待ち構えていた!とっさに剣を抜き放ち、斬りかかる隆臣!シトロン・へロスはまっぷたつになった!……が。
「ぬ、抜け殻……?」
「シトロン・へロスは脱皮するのか。しかも都市の真ん中で」
「なんて、なごんでる場合かー!」
迫りくるシトロン・へロスの本体!一斉に逃げ出す結姫たち。気がつくと一人になっていた。あのシーヤーという人の姿も見当たらない。
「た、隆臣?どこ……?」
ただ、シトロン・ヘロスの煩い羽音だけが辺りを包んでいた。
シトロン・ヘロスの羽音だけが聞こえる。
くそっ、なんて強さだ。このままじゃ……このままじゃ勝てない。月読め、なんて物を造りやがったんだ……。
隆臣は物陰に身を潜めていた。気がつけば散り散りになっていた。シトロン・へロスの羽音が大きくなった。砂塵が舞い上がる。飛んだようだ。その目は獲物を探すようにあたりを見回す。そして、一点に目を向けた。隆臣の方ではない。
まさか、結姫を狙っているのか!?いけない、しかしこのままでは……。
気が進まないが、『あれ』を使うしかない……。

シトロン・へロスが飛び上がった。そして、結姫の姿を見つけ、向き直った。
来ないでっ……!そうだ、変身!変身しよう!
勾玉を握り締め、呪文を唱え出す結姫。しかし、間に合いそうもない。
死を覚悟する結姫。が。
剣戟の音に顔を上げると、謎の黒い影とシトロン・へロスが激しく戦っていた。劣勢になったシトロン・へロスは体勢を立て直すために上空に舞い上がった。
「あなたは誰……?どうしてあたしを助けてくれるの!?」
「正体を明かすわけにはいかない。しかし、タカマレッド。俺はお前の味方だ。俺がやつを食い止める!その間に変身するんだ!」
再び向かってきたシトロン・ヘロスを迎え撃つために、大きく跳躍する黒い人影。
「隆臣……?」
声でバレバレであったという。
夕闇の中、結姫とカメラの位置からは地平線から昇った満月がバックになる場所に着地した隆臣。画像的には決めすぎである。
「月読獣、シトロン・ヘロス!タカマブラックの名にかけて貴様の命、貰い受ける!」
次回予告通りの言葉を吐く隆臣・タカマブラック。書いている人が相当気に入ったらしいぞ!殺しちゃストーリー上もだめだけど。
巨大なシトロン・へロス相手に互角の戦いを見せるタカマブラック。
「隆臣……。すごい……」
隆臣の戦いぶりに見とれていた結姫は、ふと我にかえった。そうだ、今のうちに変身するんだ。
高天の原に光あり。昼と夜とを分け、葦原のため水穂のため、地を照らす光となれ。宝珠開放!
すっかりおとなしくなったシトロン・ヘロス。
教えて……。なぜ、暴れていたの……?
「卵……」
「何?」
「この辺に、この子の卵が埋まってるの。そろそろ孵る頃なの!」

「これは……どう言うことなの!?」
『TEN-十九』の中は混乱に包まれていた。予測外の出来事が起こっている。タカマブラック。全く得体の知れない存在が現れたのだ。
「分かりません……。ただ、勾玉捕捉衛星に写し出されていた第6の反応は確かにあったんですね……。故障じゃなかったんだ……」
「タカマブラック?私たちのプロジェクトにはそんなのなかったはず……。どういうこと?あの勾玉は何?あの隆臣という男……、何者なの?タカマブラック……。黒か、不吉な色ね……」

次回予告

「俺も伝説の一部だとは思わなかった……。とりあえず会社には辞表だな」
「くそっ、戦闘員の次は怪人かっ!」
「13号、勝負はおあずけだ!」
「何で……。何で今回はこんなに内容が濃いのっ!?」

次回、『グローバルサイト・タカマイエロー!ならびに、怪人出現!ミツリョーツクツクの暴挙!ならびに、隆臣襲わる!謎の刺客出現』
来週のこの時間は『秋のスペシャル!死闘、鬼嫁VS鬼姑!鬼嫁、魔の画策・ナタデココ入りみそ汁で入れ歯をクラッシュ!』をお送りいたします。

第5話 グローバルサイト・タカマイエロー!ならびに、怪人出現!ミツリョーツクツクの暴挙!ならびに、隆臣襲わる!謎の刺客出現

「卵だと!?しかし、どうやって探せって言うんだ……?」
結姫の言葉に途方に暮れた顔をする隆臣。この辺と言われても、どこを探せばいいのか検討もつかない。そのとき。
「ここは私に任せてくれ!」
声のした方を振り返ると、どこにいたのかあのシーヤーがいた。シーヤーは携帯端末を起動させ、衛星にコンタクトを取った。
「わかった、中央公園だ。そこの地下に卵が埋まっているんだ」
変身をといた結姫と隆臣は、シーヤーや村の人とともに中央公園へと向かった。隆臣は、結姫に正体がしられたくないらしく、わざとらしくどこかへと去っていったあと、隆臣の姿に戻って現れるという手のかけようである。バレているとも知らずに。
シーヤーの言った通り、中央公園の地下に卵は埋まっていた。羽化がすでに始まっていた。公園の舗装のせいで出られなくなっていたのだ。次々と飛び立っていくシトロン・ヘロスのこどもたち。
その光景を目にし、満足げにシーヤーは携帯端末の蓋をしめた。結姫は、その蓋に取りつけられた光るランプのようなものに気付く。
「通信技師さん、それ……」
息を呑む結姫。シーヤーの携帯端末につけられていたランプは勾玉の形をしていたのだ。
「ああ、これか。珍しいだろう。私もどこのメーカーの物かわからなくて、ついつい手を出してしまったんだ。ノーブランドのようだが性能も調子もよくて……あれ?」
とくとくと携帯端末の自慢を始めたシーヤーだが、電源をきったはずの携帯端末の、そのランプが不意に今までになく強く発光したので慌てて蓋を開ける。その時。
 ばちっ 

「うわあああっ!?」
端末が放電し、感電したシーヤーが飛び退いた。その反動で帽子とスクリーングラスが落ち、その顔があらわになる。そして顔を上げ、小さく呟いた。
「…結…姫…か?」
「え……!?」
どきりとする結姫。なぜこの人、あたしの名前を?初対面のはずなのに。ま、まさか……ストーカー……。
「キミはいつからこんな所に?」
結姫の不安をよそに真顔で続けるシーヤー。
「こんな記憶は今までなかったのに。オレだよ、中ツ国の……五年一組の因幡颯太だ!」
目の前にいるのが知人と分かり驚く結姫。しかも、その颯太はどこから見ても小学生ではない。
「うそ!五年一組の因幡颯太って……全然小学生じゃないじゃない!やっぱりストーカーなんだ、自分が颯太に似てるから颯太のふりをぉっ!」
涙目になって訴える結姫。
「違うっ……!オレは颯太だ、信じてくれっ!」
「颯太なら……、颯太なら三年生のときに那智と一緒にあたしのスカートめくったの憶えてるでしょ!?その時のはいていたパンツがどんなのか、言えるはずよっ!」
「な……!わ、わかったよ!言えばいいんだろう言えば!ピンクでウサギのついたパンツだろっ!
「あ……。颯太、あの時見てないって言ったじゃないっ!何で知ってるのよっ!しかもまだ憶えてるなんて……スケベー!」
「じゃあなんて言えばよかったんだああああぁぁぁ!!」
結姫は颯太が見てないと言っていたのでそう答えると思っていたのだが。
「でも……本当に颯太だったんだね……。疑ってごめんね」
勾玉に選ばれた、二つの記憶を持つ者。タカマガレンジャーの仲間の一人。
「まさか、こんな近くにいるなんて……」
「不思議がることはないわ。伝説に記された五つの宝珠・勾玉はタカマレッドを中心に運命られて持ち主を探すのだから」
「おい、そいつは危険だ。引き渡せ。我々が責任を持って処分する」
突然、都市警備隊が現れてそう言った。そいつとはシトロン・へロスのことだ。
「処分……?殺しちゃうの!?」
「そうだ。危険だからな」
「もう危険じゃないもん!卵が見つかって、こどもたちとも会えたし、もう何もしないよ!」
「その幼虫も成長する前に始末しなくてはな。とにかく、危険だ。引き渡せ」
結姫に詰め寄ろうとする都市警備隊。その前に、立ちはだかるように隆臣が割り込んだ。
「この生き物はお前たち『Syn-OQ』の連中が作り出したものじゃないのか。自分たちでばらまいておいて、ずいぶんと勝手な言い草だな」
「なんだと!?そういう貴様もウェポン・ビースト(月読獣の組織内呼称)を手当たり次第に殺してきたのではないか!貴様に言える科白ではない!」
「確かにそうだ……だが、もうその必要もなくなった。命を奪わずとも彼らを開放する方法が見つかったのだからな」
「何をわけの分からないことを……。まぁいい。何れにせよお前は指名手配犯、牢獄に叩き込むだけだ」
「やれるもんならやってみるんだな」
「や、やめてよ……」
「そういえば、さっきから気になってはいたんだが、この男は誰だ?」
「隆臣」
「な、なんだって!」
結姫と颯太のやり取りを尻目に都市警備隊とぶつかり合う隆臣。敵は数が多い。しかし、隆臣も負けてはいない。むしろ優勢だ。
「おのれええぇぇぇ!こうなったら容赦はせん!」
形勢不利になった都市警備隊は、そう叫ぶとヨミヨミ戦闘員に姿を変えた。
「キーッ」
さっきまで喋っていたのになぜか変身して喋れなくなるヨミヨミ戦闘員たち。
「正体を現したか……!まずいな、このままでは勝てない……しかし、今ここで変身はできない!どうすれば……!」
「お頭、俺達も加勢しますっ!」
一斉に湧いてくる隆臣の子分たち。そういえばこいつらもいたのだ。忘れてた。しかし、隆臣の子分たちが加わってもヨミヨミ戦闘員たちに押される一方だ。
「ここはオレにまかせてくれ……ああっ、しまったぁ、端末は壊れたんだったあぁ!」
何かをしようとしていたらしい颯太。しかし、愛機はさっきの放電で勾玉を残して黒こげの消し炭状態になっていた。ショックに打ちひしがれる颯太。
「大丈夫、その勾玉があれば端末がなくても衛星は答えてくれるわっ!勾玉を握り締めて『布(サリヤス)』と唱えてっ!」
ビンガーの言葉に顔を上げる颯太。
「!?……『布』だな!?……」
『布』……!
颯太のからだが光に包まれ、黄色いコスチュームに包まれる!颯太はタカマイエローへと変身を遂げたのだ!
「軍事衛星『SS-ケルベロス8』よっ!我が呼びかけに応答せよっ!」
はるか上空、大気圏のはるか外に浮かぶ軍事衛星『SS-ケルベロス8』がタカマイエローの呼びかけに応答した。そして、タカマイエローの視界に『SS-ケルベロス8』の照準画面が現れた。
「隆臣!そこを離れるんだ!」
隆臣がその言葉を受けて離脱する。子分たちもだ。その直後、追撃しようとするヨミヨミ戦闘員たちに上空遥かから燃え盛る炎の玉が降り注いだ!『SS-ケルベロス8』の砲撃だ。逃げ出すヨミヨミ戦闘員たち。
「すごい!一撃で追い払っちゃった……」
「やるな(なんっっかおもしろくねー)」
「まーね」
変身すれば俺だって、という言葉を言い出せずに苦い顔をする隆臣であった。
「戦闘員だったとはいえ、都市警備隊を相手にやりあっちまったオレはもう 『Syn-OQ』にはいられない。それに、正直言って都市警備隊が戦闘員だったのはちょっとショックだったな」
「あいつらを帰したのはまずかったかもしれない。俺達のことが奴らに知れる。これから、奴らも俺達をマークしてくるはずだ」
「敵が増えちゃったね」
「いや、なんてこたないっす!俺達がいれば無敵っすよ」
話に入り込んで来る隆臣の子分。
「いや……。これからの戦いはお前たちじゃ無理だ。相手が悪すぎる」
「えっ、でも……」
「お前たちをこれ以上危険な目に遭わせるわけにはいかない。敵は月読獣だけじゃなくなった。もしかしたら『Syn-OQ』の戦闘部門が動くかもしれない」
『Syn-OQ』戦闘部門。『Syn-OQ』に歯向かう者たちをことごとく闇に葬り去ってきた秘密部隊である。
「……分かったっす。おれ達もバカじゃないですし」
「すまないな」
「でも、約束してください!この戦いが終わったらおれ達の所に帰ってきてください!絶対ですよ!」
「ああ、わかってる」

「これからどうする?」
「いや、みんなとも話したんですがね。みんな答えは一緒でしたわ。おれ達、全員生まれ故郷に帰ります。お嬢を見てたら、みんな母ちゃんに会いたくなった……って」
「そか……」
「お頭。さっきの約束、絶対ですからね。おれ達、待ってますから!」
「そう……だな」
手を振り、はるか地平線の彼方へと去っていく隆臣の子分たち。隆臣はその姿に向かって、小さく呟いた。
「本当に、すまない……」

「おれは衛星技師だが、趣味で神々の黄昏についてもいろいろ調べていた。まさか、自分がその伝説の一部だとは思いもしなかった。ときどき見る不思議な夢は……あれもオレだったんだな。あっちでも勉強してたな」
「趣味でそんなこと調べるなんて、颯太ってマニアなんだね」
「ま、マニア?」
「タカマガレンジャー、全部録画してるし。さっきも機械の説明長かったし」
「そ、それはだな」
「機械と言えば、衛星で天照様がどこにいるか調べられないかな。天照様を助けなきゃならないの」
「それが、分からないんだ。どうやら衛星で捕捉できない場所にいるらしい。その前に、勾玉を持つ仲間をあと三人探さなきゃならない。伝説の文句は五つの宝珠とある。勾玉が五つ揃わなければ天照様を助けることはできないんだと思う」
「でも、どうやって探せばいいんだろう」
「そうなのか?よし……」
『布』……!
颯太、二度目の変身。いいな、目立って!
「勾玉捕捉衛星『オービサイト』よっ!我が呼びかけに応答せよっ!」
タカマイエローの視界に、周囲の地図と、光る点が浮かび上がった。
「わかった!?」
「わ、分かった……のか?これは、どういうことだ?」
「どうしたの?」
「六つだ。勾玉の反応を示すドットが六つあった。しかも、三つがぴったりとくっついている。つまり、結姫と、オレと、もう一つ誰かがすぐ近くに……?」
「ああ、それなら隆臣じゃないかな。隆臣、タカマブラックだし」
「そうなのか?でも、なぜ六つなんだ?……とにかく、一番近い反応を探すのがよさそうだな……」
「あっそうそう、隆臣ね、なんか自分がタカマブラックだっていうの隠したいみたいだから、知らない振りしてあげてね」
「わ、わかった」
隆臣の方に歩き出した結姫の背を見ながら、タカマイエロー颯太が小さく呟く。
「隆臣が、タカマブラックだって?まずいな……」

巨大コングロマリット『Syn-OQ』。その社長室に一人の男が呼ばれたのは、ほんの数刻ほど前のことだった。
「来たか」
防弾ガラス越しに街並みを見下ろしながら月読社長が、部屋に入ってきた男に目もくれずに言った。
「お呼びですか」
「うむ。一人、消してもらいたい男がいる」
「……そいつは、オレに相手をさせるだけの男なんですか?」
「そうだ。成功すれば報酬は惜しまん。期待しているぞ」
「期待に答えて見せましょう」
男はそう言うと、部屋を去った。月読社長は遠い地平線を見ながら低く呟く。
「13号……。遂に見つけた……。もう、私の手からは逃れられんぞ」

「一つ、聞いていいかな」
まだタカマイエローのままの颯太が隆臣に向かって言った。
「きみは『あの』隆臣じゃないのか。オレ達と同じ、五年一組の」
結姫の胸が高鳴った。もし、この隆臣があの(愛しの)隆臣君なら。颯太は中ツ国の颯太とは姿が違う。ならば、(愛しの)隆臣君が中ツ国とは違う姿でこうして目の前に立っているのではないか。
「(愛しの)隆臣君……なの?」
 だが、結姫の期待は裏切られた。
「お前らの言っている「中ツ国」なんて所は知らない。そこでお前にあったこともないし、お前のことなんか知らない」
 しらを切る隆臣。そしてその隆臣の言葉に激しいショックを受ける結姫。なぜかほっとするタカマイエロー。
「一番近くにある勾玉の位置を見てみよう」
 颯太が勾玉の位置を確認しているところですが、ただいまより副音声にて『結姫の打ち砕かれた心の叫び』をお送りいたします。
副音声

隆臣君はあんな言い方しないもん……
隆臣君は笑顔がかわいくて
隆臣君はもっとずっとやさしくて
時にはおちゃめでそれでいて頼もしくて
だからあんな冷たいこと言うような人じゃないもん
きっとたまたま名前が同じだけ
あたしの隆臣君はどこにいるの?
きっとこの世界のどこかであたしが来るのを待ってる
いつかきっと会えるよね
隆臣君。たとえほんの少しでも
こんないじわるな奴と一緒にしてごめんね
でも顔はいいのよね……捨てがたいわ
こんなあたしを許してね

「青いな……」
「誰が青いって!?」
 何か勘違いしている隆臣。
「じゃなくて。見えるのがだ。青くて光っている……ところ」
「……海か」
「海だな」
「どこの海だ」
「……分からない……」
「役たたず」
「なんだと!?」
「海は広いんだ。どこの海か分からなきゃ話にならねーだろ」
「あ。もしかしてズームが効きすぎているんじゃ。そうだ。倍率下げたら周りが見えたぞ。この近くの海だ」
「最初からそうしろよ」
「すまん、ついうっかり」
「よし。行き先が分かったな。行くぞ、結姫」
「……結姫?」
「はっ。あたしったら何を……」
「??」
 とにかく、進むべき道は決まった。タカマガレンジャーたちの行軍が始まったのだ。

 海に向けて歩きだした結姫たち。だが、その道のりは遠く険しいものだった。
「つ、疲れた……」
 真っ先にへばる颯太。地べたにひっくり返り、空を仰ぎ見た。
「!?な、何だあれは!?」
 仰ぎ見た空に、異常な物体を発見した颯太。華やかな電飾に彩られた金属の球だった。しかも、恐ろしく巨大だ。
「な、何!?」
「気をつけろ、月読の差し金かもしれん」
 警戒する隆臣の目の前にゆっくりと、その巨大な球状の物体は降りたった。そして、タラップが降り、ゲートが開いて細身の影が見えた。
「初めまして、私達は地球人です」
 颯太は宇宙からの使者だと思いこんでいる模様。
「……あたしゃ行商だよ。これでも地球人だ」
「行商か……UFOに乗った行商なんて初めて見たな……。動力源は何だろう」
 よく見ると『SYN-OQ謹製』の文字が。
「うちがとうとう開発に成功したのか……」
「水はいらんかね。そっちのお嬢ちゃんにはブレスレットなんかどうだね」
 かまってもらえないので勝手に商売を始める行商。
「あたし、お金ないから……」
はいないのか」
 未成年としてあるまじき発言をする隆臣。
「いいのそろってるよ」
 行商の指差すほうには縄で縛られた女性たちが……
「ちょっ、ちょっと待て、どっからさらってきたんだっ」
「ど、どこだっていいでしょ。買わないなら用なしだよっ」
 行商は颯太たちを振り落としていずこへかと飛び去った。
「待て、俺はまだ女の顔も見てないぞ!颯太、てめーのせいで女が行っちまったじゃねーか!」
「なんで女なんか買う気になってんのよっ」
「大体それどころじゃないだろ、今の女性たちは拉致されてたんだぞ!?」
 本当に子供むけ番組なのか!?と言うような状況になりつつあるのでむりやり場面を切り替えることにする。
「金をどこかで手に入れないとな。そうだ、衛星技師どのがネット詐欺で金を稼いで……」
「ネット詐欺とはなんだっ」
「また賞金首になりたいの!?」
 まだだめみたいです。
「同行させたのは間違いだったか……」
 誤ってつついたビンガーと格闘する隆臣を見ながら漏らす颯太のため息混じりの呟きももっともであった。

 えいっ、アルフォークロア!タカマガレンジャーコスプレ変身セットできみもタカマガレンジャーになろう!
※必殺技は出せません。怪人は別売りです。
 CMの間に騒ぎもおさまり、砂漠を旅するタカマガレンジャーご一行。ふと、結姫が足を止める。
「……?なんだかすっごくいい匂いがする……?」
焼き鳥か?」
 ビンガーと格闘になる隆臣。
「うわあぁっ、花が浮いてるっ」
 結姫の目の前にはふわふわと浮かぶ花畑が。そして隆臣は無視された。
「シルフ・デイジだよ。大気を養分にして育つんだ」
 知恵をひけらかし悦に入る颯太だが、結姫はお花に夢中で聞いてない
 結姫がシルフ・デイジに手を伸ばした。その時、どこかから鋭い声が……声がするはずなんだが……。
「この花に囲まれた天国のような場所で、本当の天国を見てみたいと思わないか?」
 隆臣が口説いてました。
「い、今はそれどころじゃないし俺にそんな趣味は……そ、それにさわるな!」
 どうにか振り切って結姫に向かって叫ぶ男。一方、口説いていたのがだと知ってショックを受ける隆臣。
「ひっくり返されると合成画像の荒い部分が見えるからな」
 やけになっている隆臣。
「その通り……いやっ、違う、違うぞっ。それは俺の商売に使う大事なものだ」
「そうだったのか……ご、ごめんなさい。でも……ちょっと気になるから裏見せて
 結姫からシルフ・デイジをもぎ取る男。やっぱりまずいらしい。慌てて立ち去ろうとする。
「待って、きみ、この辺で勾玉って見かけたことないか!?」
 逃げようとする男に声をかける颯太。
「なんだそれは」
「(やっぱり唐突だったかな)不思議な光る石なんだけど」
「そう、こんな……」
 結姫が勾玉を取り出し、男に見せると男の表情が豹変した。
「それは!そうか、お前たちがタカマガレンジャーだな!?」
「!?何でそれを……」
「我が名はミツリョーツクツク!月読様配下の怪人だ!」
 あまりにも情けない名前に気が抜けるがこれも戦隊ものの常だと思って諦めてくれ、タカマガレンジャー諸君!
 そして、ミツリョーツクツクは人の姿を捨て、その恐るべき怪人としての姿を……

 と言うところですが、放送終了の時間になりました。
「じゃあ、この続きは次回なの!?」
 そうです。
「俺の立場はどうなるんだ!?」
 すまん。
「なんだかすっごくあっさり開き直ってるよぉ?」ひそひそ
「じつはけっこうこれからもこの手で切りぬける気じゃねーか?」ひそひそ
「いいのかよ、まだ1巻終わってないんだぜ」ひそひそ

「大丈夫か、coSiNe」
「大丈夫か、coSiNe」
「大丈夫か、coSiNe」

 だめかもしれね。ええい、この先は次回ったら次回だい。

次回予告

「本当に勝負がおあずけになるとは思わなかったぞ!?」
「怪人もようやく本性が見られるぜ!」
「1年以上間開けといてこの体たらくか」
「次回こそ、終わるよね!?」
次回予告でまで責めないで。

次回、『残りわずかな話でこってり!激闘、ミツリョーツクツクと謎の刺客の勝負二本立て!』
来週のこの時間は『ゆく世紀くる世紀、新たなる時代の幕開けになんて語呂が悪い』をお送りいたします。
「みんな……あたしのこと、タカマガレンジャーのこと、覚えていてくれた?」
「覚えてねーだろ」
「きっぱり言うな」
「作者が忘れてたんだから絶対読者なんか覚えてないぞ」
「確かにそうだな……。前回の放送の翌週が新世紀だもんな。今はもう2004年だぞ。3年のブランクだ。記憶に残ってなくて当然だろうな」
「うぅ……ま、まけないもん、くじけたりなんかしないもん……。ええい、元気に行ってみよー!」

第6話 残りわずかな話でこってり!激闘、ミツリョーツクツクと謎の刺客の勝負二本立て!

「で、どこからだっけ」
3年の時を経て、ようやくミツリョーツクツクがその姿を明らかにする時が来た!
「待たせて悪かったな。ちなみに待たせたのは俺たちじゃないから」
「いいからとっとと変身しろ、雑魚
そうだそうだ、まったくだ。
「その前に、この花を集めるのを手伝ってくれたらそのあとで見せてやるよ」
「なんでだよ」
「変身するのにこの花が要るんだよ」
「なんでだよ」
演出だ」

かくて、要るのか要らないのか分からない演出のために花を集めなければならなくなった。でも結姫は嬉しそうだ。
三方に散った三人。結姫はシルフデイジを少しずつ集めてはいるが、お花に囲まれて楽しそうにくるくる回ったり駆け回ったりして遊んでいる。
「きゃーっっ、きれーいっっ、夢みたいっ……あ、夢なんだっけ、ここ」
「結姫、あっちにたくさんありそうよ」
サボりっぱなしの結姫を心配してビンガーがお花たくさんスポットに案内する。
「中ツ国でもこんな植物が育てばもっと緑が増えるのにね」
花しかない植物なので「緑」は増えないと思う。
お花スポットまで少し距離があるので雑談モードに入る結姫。
「あたし、学校で聞いたわビンガー。タカマガレンジャーのお話……でも、これってテレビの特撮番組なんでしょ?」
「結姫の知っているのは特撮番組だけど、今それと同じことが起こっているのよ」
「ビンガーはロボだって言ってたけど」
ロボチガウ ロボチガウ ロボチガウ ロボチガ
口から紙テープを吐き出すビンガー。
ロボだこれー!……じゃなくて。だめ、ビンガー!それの元ネタは集英社だから!あ、そうそう、花あつめ花あつめっ」
どうにかごまかそうとする結姫。ちなみに分からない人のために解説するとさっきのネタは「すごいよマサルさん」です。
「あ、あんなところにかたまって咲いてる」
今までサボってた分を一気に取り返せるので喜々としてダッシュする結姫だが。
「きゃ」
結姫は何かに蹴つまずく。そして、何か微妙に柔らかいものの上に倒れこんだ。目を開けると、隆臣がそこに横たわっていた。結姫は隆臣に馬乗りになっていた。結姫の顔の目の前に隆臣の顔が……。この番組は幼児向け番組です。
「俺の邪魔しかしねーな、お前は」
「こんなところでサボって……!」
人のことは言えるのか、結姫!とりあえず離れなさい。この番組は幼児向け番組です。
「これだけあるんならこれまとめてもっていけばいいからな」
「もうちょっとで籠がいっぱいになるから分けて」
「やだね」
「ケチ」
また昼寝に入る隆臣のそばから花をこっそりと持っていく結姫。これでしばらくサボれる。

「もうこれくらいでいいか?」
ただ一人真面目にこつこつと花を集め続けていた颯太がミツリョーツクツクに花を差し出す。
「ああ、暗くなったしな」
「結姫、隆臣は?」
「知らないもん、あんな奴!」
隆臣と一緒にサボってたのがばれると困るし、一人真面目に集めていた颯太にあのお花たくさんスポットを知られるといろいろと颯太も大変だろうからすっとぼける結姫。
「こいよ、見せてやる。俺の華麗な変身を」
 あまり見たくないが一応ついていくことにした。

その頃。誰も起こしてくれないのでぐっすり寝込んでいる隆臣のところにあやしい影が近づいていた。隆臣の姿に気付き、そちらに駆け寄るあやしい影。
「これは……!13号、……死んでいるのか?」
目を覚ましてむっくりと起き上がる隆臣。
「殺すな」
「生きていたのか!よし、殺す
「待て。誰だてめー」
「問答無用!月読社長のご意思にて貴様の命、貰い受ける!覚悟せいっ、13号!」
「ちょっと待て。それどころじゃない、寝坊したっ
花を入れた籠を抱えて走り出す隆臣。
「逃げるな!」
後頭部を小突かれてすっ転ぶ隆臣。
「何しやがんだ!てめぇがその気なら相手になってやる!」

「お前、雑魚の癖にどこまで引っ張れば気が済むんだ」
「……まだ?」
二人に激しくせっつかれ苛立つミツリョーツクツクだが。
「よし、ここでいいだろう。とくと見るがいい!」
結姫と颯太が集めた花をあたりに散らすと、ミツリョーツクツクは手を高く掲げた。
「ぴんぷるぽんぷるぱむぽっぷん♪」
よりによってその呪文かよ!周りのシルフ・デイジが集まりミツリョーツクツクを覆いつくす。そしてそのキュートな変身シーンからは想像もつかないようなキモい怪人へと変身を遂げたのだ!網タイツボンテージ、そして頭にはみかんのネットを被っている。
「うわあ。いろんな意味でキモい
「こ、こんなキモい奴相手にするの……!?元々カマっぽくてキモい見た目なのに」
「人をキモいキモい言うな!それに相手をするのは俺じゃない、こいつだ!」
両手から網が飛び出す。網は海の中に投げ込まれ、網にはたくさんの貝が掛かってきた。そして、網があやしい光を放つと、その貝が見る見る巨大化していく。
「こ、これは……!?」
「アゲート・ナイト……海岸にすむ希少な巻貝だが……これはもはや月読獣だ!」
「ってことは……」
「月読獣は、怪人が作り出していたのか……!」

激しい死闘を繰り広げていた隆臣と謎の男だが、二人の目に遠くのほうで何かが光るのが見えた。
「やばい、何か起こった!お前とは付き合ってられん、さらばだ!」
隆臣はダッシュする。
「逃がさねぇぞ!」
執拗に追ってくる謎の男。しかし、隆臣はその目の前で変身する。
「!!」
「付き合ってられんといっただろう!」
一撃で吹っ飛ばされる謎の男。タカマブラックとなった隆臣は大きく跳躍し、星空にまぎれた。謎の男は立ち上がり、先ほど光の見えた方に向かって走り始めた。


「タカマブラック、只今参上っ!……うわぁ、なんだこのキモい怪人は!」
「遅れてきてまでキモいとか言うな!」
「遅かったじゃない、隆……マブラック!」
隆臣といいかけた結姫。うまい名前のおかげでどうにかごまかせた。
「怪人より、この月読獣をどうにかしなければ!」
巨大化したアゲート・ナイトたちは海岸線で半透明の殻の奥で色とりどりの光を放っている。
「このイルミネーションみたいのが月読獣か」
「うん。きれいだねー」
「……別に攻撃してくるでもないな……。元々がそういう生き物じゃないし」
「よし、こっちはほっといてこの怪人を叩きのめすぞ!」
「よーし、変身だねっ」
「行くぞ、『布』!
変身する颯太の横で結姫は長い呪文を唱え始める。呪文が長いのでなかなか変身できない。それでも、結姫はくじけない。そう、これはヒロインである自分に対する過酷な試練なのだ。だから、負けない。
高天の原に光あり。昼と夜とを分け、葦原のた
「追いついたぞ13号……って、なんだこのキモい網男は!」
なんか割り込んできたので呪文が止まってしまう結姫。
(モノローグ)もう少しだったのに、またやり直し。でも、くじけちゃだめだ。でも……心が折れそう。あたしって、もしかして悲劇のヒロインなのかしら……。
「てめーっ!関係ないのにキモイとか言うなー!」
「もう追いついてきたのか。それより俺を番号で呼ぶな!吐き気がする……!多少は網怪人のせいもあるが……」
「勝手に吐いてろこんちくしょー!」
「あいにく俺はお前のこーのナンバーしか聞かされていない。俺は貴様を殺すように月読様に命じられた、戦闘部門の派遣員だ!」
「それより、もう2巻の内容に入ってるよな。いいのか」
「1巻の内容だけだと短すぎて引っ張れないからキリのいいところまでやるそうだ」
「待てお前ら。俺のこと無視して話進めるんじゃない」
「何ややこしいの連れて来てんだよ、どうしようもないな、お前」
「んだとぉ、俺だって連れてきたくて連れて来た訳じゃ」
「うっるさーい!変身できないでしょ!」
必殺暴徒鎮圧シャウトにより一斉鎮圧される。
「あたし、主役よ、しゅやく!あたしが変身しようとしてるんだから邪魔しないの!テレビの前のみんなもこの瞬間を待っているのよ!?視聴率下がっちゃうでしょ!」
ごもっともな事を言い、ゆっくりと深呼吸して心を落ち着ける結姫。そして。
高天の原に光あり。昼と夜とを分け、葦原のため水穂のため、地を照らす光となれ。宝珠開放!
「はあぁ、やっと変身できたぁ。よぉーし、みんな、やっちゃうよっ。今回は怪人だから思いっきりやっちゃおうねっ!」
「ああ!」
「言われなくてもその気だ!」
「なんだか知らんが俺も参加するぞ!こういうのは大好きだ!」
袋叩きにあう怪人。1対多で敵をぼこぼこにするのは戦隊ものの常である。
「こいつが網怪人なら、弱点は網だ!」
「網ったって網だらけだぞ、どの網だ!」
「全部だ!」
網という網を破きだす隆臣と謎の男。
「ちょ、ちょっと待って……。素っ裸には……しない……よね?」
ここにきて尻ごみする結姫。
「ボンテージは破らなくていいぞ、親御さんから苦情が来るから!ボンテージ着てる時点で苦情来るとは思うけどな」
「よし、じゃあとはこの頭に被ってる網だけだ!」
頭のみかんネットをむしりとると。
「ああっ、この顔は……!行方不明になっていた派遣社員の山田さん!」
なんか知り合いだったみたいです。
「はっ。俺はいったい何を。ここはどこだ、俺は月読社長から呼ばれていたんだが。いかん、早く行かないと怒られる」
怪人だった山田さんが起き上がろうとしたその時だった。ザバーンという音がして海から巨大な影が!
「こ、これは月読獣ゼウグ!?」
ゼウグは山田さんを一飲みにすると、瞬く間に海に帰って行った。
「や、山田さあああああん!……いい人だったのに……」
謎の男はがっくりと膝を落とし、うなだれた。
「あれは……ゼウグは怪人を監視し、不要になれば排除する……。しかし、怪人は、元はSYN-OQの社員だったのか……」
「月読は……社員まで改造していたのか……!」
颯太の言葉に隆臣は顔を顰めた。そして、自分の手を見つめる。自分も、奴に改造された身……。



「たいへんっ」
 突然、結姫が叫ぶ。月読獣と化したアゲート・ナイトたちの、輝きが失われていたのだ。
「これは……。バッテリーが切れそうなんだ!バッテリーが切れれば……死んでしまう!」
「バッテリーで動いてたのか、こいつら」
「でも、こんなところで充電なんてできないっ……。どうすればいいの!?」
「それなら心配はない。俺に任せろ」
手を高く掲げ、宇宙のお友達……じゃない、人工衛星との交信を始めるタカマイエロー。
「電力供給衛星『トール3』、応答せよ!彼らに電力を!」
稲妻が轟き、あたりを閃光が包み込む!閃光が収まると、辺りは闇に包まれていた。
「止めを刺してどうするんだ!アホか、お前」
「アホはお前だ!よくみろ!」
アゲート・ナイトたちは一斉に、今までになく強く輝き始めた。
「よかった……。みんな、無事だったんだね。おなかいっぱい電力を蓄えることができたんだね!」
一度はほっとする結姫だが。
「どこかの町の海浜公園にでも連れて行けば電力ももらえるだろうし邪魔にされることもない。こうなってしまった以上、元に戻すことはできない。ならばせめて、人に喜ばれるように工夫して、生きながらえさせるしかない」
「元は人間とは関係のないただの生き物だったのに……」
悲しみに結姫は泣き出してしまう。
「この子達も……、さっきの山田さんも月読さえいなければこんなことにならなかったんだよね……。許せない、月読……絶対に!」
涙する結姫の後ろで、謎の男は山田さんの形見とも言えるみかんネットをぎゅっと握り締めた。
「あ……何か入ってる」
みかんネットの中から何か輝くものを取り出した。それを見て、全員が息を飲んだ。
「ま……勾玉!?」
謎の男の手に握られていたのは紛れもない、緑色に輝く勾玉だった。

次回予告

「みんな、ごめん……、ごめんなさい……!こんな、こんなつもりじゃなかったの!お願い、信じて……」
「あたし、颯太の家にお泊りしなくてもいいんだねっ!?やったー、なんかついてるかもー」
「何だよー。それじゃ夜は隆臣の家泊まり行っちまうぞ」
「うわあああ、だ、誰だこれ!」
「そんなわけで、タカマガハラで待ってますよ」

次回、『事態は他のクラスにまで!中ツ国の全員集結!長門先生の恐るべき過ち、そしてビデオ三昧!』
来週のこの時間は『しゃべる最終兵器明石家さんま27時間生トーク!』をお送りいたします。

次巻に続く・・・